アメリカのファストファッションブランド「FORVER21(フォーエバー21)」が、日本事業から撤退することが公式webサイトで発表されました。10月末には国内全14店舗を閉店し、オンラインストアも閉鎖される予定となっています。
一世を風靡したファストファッションブランドになにが起こったのでしょうか?
フォーエバー21のこれまで
フォーエバー21は1984年に創業。アメリカ合衆国カリフォルニア州のロサンゼルスを拠点とし、若者を対象にカジュアルでリーズナブルなファッションを展開してきました。アジアやヨーロッパなど、世界800国以上において店舗を拡大しています。
創業者の韓国系アメリカ人、ドン・チャン氏によると、「FOREVER21」というブランド名は、「女性はいつまでも21歳でいたいもの」という世界共通の女心に由来しているそうです。
日本では2009年4月に原宿店がオープンし、アメリカの最新の流行を取り入れた服が手頃な価格帯で販売され、若い女性を中心にとても話題になりました。2010年には、銀座に2号店も誕生しました。
おなじく若い女性に支持を集めるファストファッションブランド「H &M」の1号店が銀座にオープンしたのが、2008年9月。高級なイメージが定着していた銀座にファストファッションの店が軒を連ねるようになったのは、時代の変化を感じさせるできごとでもありました。
世界中の流行を担っていたフォーエバー21ですが、2018年8月チャプター11と呼ばれる米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請を検討していることが、アメリカの金融・経済メディア「ブルームバーグ」で報道されていました。
アメリカの破産手続きに関する法律としては、チャプター7と呼ばれるものもあります。チャプター11との違いは、“会社を更生するかどうか”にあります。
チャプター11は破産後も会社が存続して、再構築の計画を立てて更生をはかります。対してチャプター7は、通常の破産を示しており(日本の破産法に相当)、適用されると負債の清算をして事実上会社が消滅します。
フォーエバー21は近年の売上減少と、投資債権先獲得が難航していたことが原因で、チャプター11の検討に踏み切ったのだそうです。このころ既に、経営破綻の兆しが見えていました。
ファストファッションの流行が落ち着き、また、実店舗からオンラインでの購買に消費者行動が移行しつつある中で、百貨店やショッピングモールが閉鎖に追い込まれるアマゾンエフェクトが影響したという声もあります。
日本では1号店の原宿店が2017年に閉店し、20店以上を展開していた店舗も現在は14店にまで減っています。
H&M、ZARAとどう違うの?
日本に上陸したファストファッションブランドでほかに代表的なものといえば、H&MやZARAが有名ですが、おなじファストファッションというジャンルでも、それぞれ特徴が異なっています。
ビジネスモデルとしては、フォーエバー21は他社の製品を買いつけて自社で販売する仕入れ型。対しH&MとZARAは、自社で製造も手がける製造小売型(SPA型)です。
デザインで言えば、フォーエバー21はピンクやオレンジなどカラフルな色使いが特徴。日本人にとってはサイズが大ぶりなものが多めです。
H&Mもおなじく若者向けで低価格という点はフォーエバー21と共通していますが、デザインはもう少し落ち着いていて、比較的ベーシックで万人受けしやすいという印象です。
ZARAは黒やオリーブ系のカラー展開が多く、クールで大人っぽい雰囲気のデザインが特徴です。
さいごに
今後はアパレル小売業界もますます実店舗が減少し、オンライン販売に移行していくことが予想されます。オンライン販売では人件費、店舗の家賃が削減できることを考えると、自然な流れとも受け取れますね。
フォーエバー21の撤退は、登場したときとおなじように時代の変化を象徴している現象といえるかもしれません。
また、安価な商品が流通するには、その背景に理由があることも事実です。
ファストファッションは低価格、劣化の早さから、「使い捨て」されやすい傾向にあります。素材の栽培農場、製造工場や販売現場の労働者低賃金雇用による貧困なども挙げられます。
最近では、持続可能性を意味する「サスティナビリティ」という考え方や、SDGs活動にも注目が集まってきています。
ファッションを純粋に楽しむ気持ちはもちろん大切ですが、その気持ちを大切にしていく中で、上質なものや長く使えるものに対して価値を見出す視点や、製品がどのようにして私たちの手元に届けられるかを想像する力が、購買者側にも今後さらに必要になってくるかもしれませんね。